これまで200名以上のクライアントを指導してきて、どうしても気になるパターンがありました。
食事も管理している。トレーニングも真剣にやっている。なのに結果が出ない。
そういう人が一定数いるのです。
最初は食事の内容をもっと細かく見直すべきか、トレーニングのプログラムを変えるべきか、そんなことを考えていました。
しかし話を深く聞いていくと、ある共通点に気づきました。
全員、睡眠に問題を抱えていました。
寝つきが悪い。夜中に目が覚める。朝起きても疲れが取れていない。睡眠時間が短い。
内容はさまざまですが、睡眠の質や量に何らかの問題があった。
そしてその睡眠の問題をクリアしたクライアントは、ほぼ例外なくその後のプログラムがうまく進みました。
筋肉がつきやすくなった。脂肪が落ちやすくなった。体力が戻ってきた。
食事もトレーニングも変えていないのに、です。
この経験から私は確信しています。睡眠はボディメイクの土台だ、と。
睡眠には2種類ある
睡眠は大きく2種類に分けられます。ノンレム睡眠とレム睡眠です。
ノンレム睡眠は脳が休む眠りです。眠りが深くなるほど脳波はゆっくりになり、脈拍や呼吸も落ち着きます。疲労回復、成長ホルモンの分泌、記憶の定着など、身体を修復する作業のほとんどがここで行われます。
レム睡眠は身体が休む眠りです。まぶたの下で眼球がキョロキョロと動くのが特徴で、脳は起きているような活発な状態にあります。記憶の整理や心理的なメンテナンスに関わっており、鮮明な夢を見やすいのもこの段階です。
この2つが約90分のサイクルで交互に繰り返され、一晩に4〜5回続きます。
夜の前半はノンレム睡眠の割合が高く、後半になるにつれてレム睡眠が増えていきます。
ボディメイクを左右するのはN3睡眠
2種類の睡眠の中でも、特にボディメイクに直結するのがノンレム睡眠の中のN3睡眠です。
N3睡眠とは、ノンレム睡眠の中で最も深い段階のことを指します。徐波睡眠やスローウェーブ睡眠とも呼ばれ、脳波に大きくゆっくりとした「デルタ波」が現れる状態です。
このN3睡眠では、身体にとって非常に重要なことが起こっています。
成長ホルモンの分泌です。
成長ホルモンというと背が伸びるホルモンというイメージを持つ人もいますが、大人にとっても非常に重要です。筋肉の修復と合成を促し、脂肪の分解を助け、細胞全体の回復を担っています。
つまり筋肉を増やしたい人にも、脂肪を落としたい人にも、N3睡眠は欠かせません。
さらにN3睡眠ではメラトニンの分泌も行われます。メラトニンは抗酸化作用を持ち、身体を酸化ストレスから守る働きもあります。トレーニングで傷ついた身体を修復するうえで、このメラトニンも重要な役割を果たしています。
N3睡眠は入眠後すぐ、だいたい最初の1〜2時間の間に集中して現れます。つまり眠り始めの時間帯に深い睡眠に入れるかどうかが、ボディメイクの結果に直結していると言っても過言ではないのです。
N3睡眠を妨げているものは何か
ではなぜ、N3睡眠に入れない人が多いのでしょうか。主な原因はいくつかあります。
就寝前のスマホ・ブルーライト。
ブルーライトはメラトニンの分泌を抑制します。メラトニンは眠気を誘発するホルモンでもあるため、これが抑えられると深い睡眠に入りにくくなります。
アルコール。
寝酒は眠りを浅くします。アルコールは入眠を早める一方で、睡眠の質を著しく低下させます。N3睡眠の時間が短くなり、夜中に目が覚めやすくなります。
カフェイン。
カフェインの半減期は約5〜7時間です。夕方以降にコーヒーやエナジードリンクを飲むと、就寝時間になっても身体が覚醒状態のままになります。
深部体温が下がっていない。
人間は深部体温(身体の内部の温度)が下がるときに眠気を感じ、深い睡眠に入りやすくなります。就寝直前の激しい運動や熱いシャワーは深部体温を上げてしまうため、かえって睡眠の質を落とします。
今日からできるN3睡眠の改善策
N3睡眠の質を高めるために、現場でも効果を感じている方法を紹介します。
入浴は就寝90〜120分前に済ませる。
湯船に浸かって深部体温を一度上げておくと、就寝時に体温が自然に下がり、深い眠りに入りやすくなります。シャワーだけの場合は効果が薄いため、できれば湯船がおすすめです。
就寝1時間前からスマホをやめる。
難しければ画面の明るさを最低限に落とし、ナイトモードに切り替えるだけでも違います。できれば読書や軽いストレッチに切り替えましょう。
カフェインは14時以降は控える。
午後にどうしても飲みたい場合はカフェインレスのコーヒーや麦茶などに切り替えるのが現実的です。
寝室を暗く、涼しく保つ。
室温は26℃前後、できれば遮光カーテンで光を遮断します。光と温度は睡眠の質に直接影響します。
日中に軽い有酸素運動を取り入れる。
適度な身体的疲労は深い睡眠を促します。ただし就寝直前の激しい運動は逆効果なので注意してください。
就寝1時間前にマグネシウムを摂取する。
マグネシウムは神経の過剰な興奮を抑え、身体をリラックス状態に導く働きがあります。結果として副交感神経が優位になりやすく、深い睡眠に入りやすくなります。摂取量の目安は400〜800mg。サプリメントで手軽に補えるため、睡眠対策として取り入れやすい選択肢の一つです。
まとめ
どれだけ食事を整えても、どれだけトレーニングを頑張っても、睡眠が崩れていれば結果は出にくい。
これは理論ではなく、現場で何度も見てきた事実です。
特にN3睡眠、つまり深い睡眠に入れているかどうかは、成長ホルモンの分泌量に直結し、筋肉の回復・合成・脂肪の分解にまで影響します。
難しいことを一気に全部やる必要はありません。
まず就寝前のスマホをやめる。入浴のタイミングを少し早める。それだけでも睡眠の質は変わります。
トレーニングと食事の努力を無駄にしないために、睡眠を見直してみてください。